シングルエンジンへの愛 〜SR500との出会いと別れ、そしてBSA441への憧れ〜
バイクの世界には数え切れないほどの魅力がある。
マルチシリンダーの官能的な咆哮、
2ストロークの鋭いパワーバンド、
そして現代のスーパースポーツが見せる圧倒的な加速性能。
しかし、私がこれまで愛し続けてきたのは、
**シングルエンジン**という孤高の存在だった。
SR500を3台、BSA441を2台。
これらのバイクたちと過ごした日々は、
私のライダー人生そのものだった。
**シングルエンジンの魅力**は、
その軽やかさと扱いやすさにある。
まるで自分の手足のように素直に応えてくれる相棒との対話。
それが、私をシングルエンジンの虜にした理由だった。
運命の出会い、そして失望 〜初代SR500との邂逅かいこう〜
初めて**SR500**を手に入れた時、
私の心は期待で躍っていた。
ビッグシングル500cc。
その響きだけで、圧倒的なトルクと
野性味あふれる走りを想像していた。
しかし、現実は残酷だった。
期待という名の罠にはまってしまったぼくがそこにいた。
街を走らせてみると、そこにあったのは拍子抜けするほどの静寂だった。
4気筒エンジンと変わらない上品な音色で、
するすると流れるように走るだけ。
これが噂のビッグシングルなのか?
心の中で疑問符が踊った。
心からがっかりした。
正直、イメージだけで買ってしまって失敗したと思った。
そのくらいつまらないバイクだった。
確かに500ccの排気量は伊達ではない。
4速まで上げてしまえば、
まるでオートマチック車のような滑らかさで、
わずか10km/hからでも
アクセルを開けば素直に高回転まで回ってくれる。
もっさりした加速で、4気筒より遅い、、、、
シングルエンジンの宿命か、
加速は決して速くはなかった。
どこがロングストロークのエンジンなんだ??
むしろ、期待していた野性味とは程遠い、
あまりにも上品すぎる走りに戸惑いを隠せなかった。
友の言葉が導いた奇跡の変貌 〜スーパートラップマフラーとの出会い〜
困惑するぼくを見かねて、友人が声をかけてくれた。
彼はSR400乗りだった。
「**マフラーを交換**すれば見違えるように変わりますよ!」
彼のSR400、スーパートラップを付けたバイクに乗ったが、
正直トルク感はないし、がっかりしていた。
しかし、半信半疑、いや、だまされた気持ちで上野のバイク街へ向かった。
そこで出会ったのが、**スーパートラップマフラー**だった。
フルエキパイ+サイレンサー15万円の出費は当時のぼくに痛かった。
※フルエキパイ+サイレンサーを交換しないと意味がありませんよ!
早速友人に手伝ってもらって、 しょぼい純正マフラーを取り外しにかかった。
純正マフラーの重量は衝撃的だった。
複雑怪奇なサイレンサーが装着されたそれは、
おそらく20kgはあっただろう。
二人がかりでようやく降ろせるほどの重量物。
一方、スーパートラップマフラーの軽やかさといったら!
アルミ製のそれは、わずか10kg程度。
この瞬間、パワーウェイトレシオの劇的な変化を直感した。
そして、**スーパートラップマフラーを装着**した瞬間、
SR500は別の生き物になった。
まさに「**トルクの塊**」
その表現がこれほど相応しいバイクはないだろう。
歯切れの良い排気音が心を震わせ、
アクセルを捻るたびに背中を押す力強いトルク感。
まるで別次元のバイクに乗り換えたような錯覚に陥った。
排気量がさらに300cc位アップした感覚!
現代では珍しい**キックスターター**での始動は確かに不便だ。
しかし、趣味として、愛車との対話として捉えれば、
それもまた愛おしい儀式に思えてくる。
バイク便時代の相棒 〜走行距離10万キロの絆〜
初代SR500との蜜月は、
**バイク便**という過酷な現場で育まれた。
4年間、雨の日も風の日も、東京の街を駆け抜けた。
**走行距離10万キロ**はあっという間に突破。
現代のバイクでは考えられないような
**ハードな使い方**だったが、
SR500は文句ひとつ言わずに働き続けてくれた。
朝一番のキックスタート、
雨に濡れた車体を拭きながらの点検、
そして夜遅くまで続く配送業務。
SR500は私の仕事のパートナーとして、
決して裏切ることはなかった。
こわれることは一切無かった。
**国産車の信頼性**というものを、
身をもって体験した日々だった。
ただトルクの太いエンジンなので
リヤタイヤが3000kmで交換が必要というのには
不満があった。
しかし、**空冷エンジンの宿命**として、
10万キロを迎える頃には熱だれが気になり始めた。
夏の渋滞でのオーバーヒート気味の症状、
そして全体的なパワーの低下。
愛車の疲労を感じ取った私は、
心を鬼にして2台目への乗り換えを決断した。
※当時のぼくはメカニックの知識があまりにもありませんでしたが、
今だったら軽いオーバーホールで直ったかもしれませんね。
2代目、そして3代目への想い
2代目SR500も、当然のようにスーパートラップマフラーに換装した。
もはや**純正状態のSR500**に乗る気はしなかった。
それほどまでに、**マフラー交換による変貌**は劇的だったのだ。
バイク便を引退した後、一度はSR500を手放した。
しかし、私の病気とも言える愛着は消えることがなかった。
3台目SR500を迎え入れたものの、
今度は他のバイクへの好奇心が勝り、
再び別れの時が訪れた。
もう、自分の本当に好きなバイクに乗れば良いじゃないか。
そんな繰り返しの中で、
ぼくはあることに気づいていた。
美しさへの憧憬 〜BSA441という存在〜
正直に言おう。
ぼくは**SR500を美しい**と思ったことはない。
ただ、**OHVシングルの元祖BSA441**は実に美しいと思う。
SR500をよく見ると、旧車の英国車をよく参考にしているなと感じる。
節々にここはノートンを参考にしている、
ここはトライアンフT140を参考にしていると言うのがわかる。
しかし、その組み合わせは不細工だ。
KAWASAKIのW1はあんなにカッコイイのに、
なぜヤマハがビンテージバイクを踏襲できなかったのか
疑問でならない。
メーターはカッコ悪いし、フレームはカッコ悪いし、
特にエンジンはカッコ悪い。
※特にフレームはハザードなどを付けるタブがカッコ悪いのだ。
シートカウルも付けている意味がわからない。
ダサいと思う。
色々言いたいことはあるが、
これはぼくが**BSA441**を知っているから
比較するとそう思うのだ。
BSA441の持つ気品、歴史の重み、
そして何より美しいプロポーション。
それらを知ってしまった今、
SR500の武骨さが際立って見えてしまう。
しかしながら、**国産車のSR500**はバイク便で10万キロ走ってもこわれないし、
**エンジンのタフさ**には心から感心する。
BSA441が10万キロ走る姿を私は想像できない。
だってBSA441は振動がもの凄いんですもの。
**英国車の美しさ**と引き換えに失うものの大きさを、
理屈では理解している。
カスタムという名の夢と現実
**SR500はカスタム**し甲斐のあるバイクだと思う。
シャーシーだけあれば、豊富な**カスタムパーツ**で
まるで英国車のように仕上げることができるのだ。
しかし、フレームとエンジンがカッコ悪いので、
**英国車風に仕上げたSR500**を見ると残念な気分になる。
カッコ悪いバイクです。
どれだけ外装を美しく仕上げても、
根本的な骨格の野暮ったさは隠しきれない。
それでも多くの**SR500オーナー**が
**英国車風カスタム**に挑戦するのは、
きっと私と同じような憧れを抱いているからなのだろう。
ロッカーズを気取っている人も
なんてカッコ悪いんだとぼくは思う。
当時のイギリス車はツインが盛んなのに
なんでシングルエンジンのSRのカスタムパーツだけ
多いんだろう?
これは商業主義でたきつけられた罠に違いないと思う。
そんなに乗りたかったらカワサキのW1にのれよ!
と言いたい
※当時免許制度の壁がありSR400にしか乗れなかった世代のせいもあると思う。
ぼくは府中運転免許試験所で限定解除しましたよ。
時の流れが運んだ新たな出会い
時は流れ、運命的な出会いが待っていた。
**SR500の開発に影響を与えた**とされる**BSA441**。
本来であれば、最初からこのバイクに乗りたかった。
しかし、当時のぼくには旧車を扱う知識も度胸もなかった。
価格も**SR500の中古の3倍**近く。
手の届かない憧れの存在だった。
しかし今、**BSA441との出会い**が私の前に現れている。
これは単なる偶然なのか、
それとも運命なのか。
しかも2台目、、、
※1台目は金がかかりすぎて嫌になりました。
長年の**シングルエンジンへの愛**が、
ついに本当の理想へと向かおうとしている。
SR500で培った経験、
10万キロという圧倒的な走行距離から得た知識、
そして何より旧車への理解。
すべてが今、BSA441への道筋を照らしているような気がする。
終わりに 〜シングルエンジンへの愛は続く〜
振り返れば、ぼくのバイク人生は
**シングルエンジン**とともにあった。
実用性のSR500、憧れのBSA441。
どちらもぼくにとって特別な存在だ。
**SR500が教えてくれた**のは、
バイクの本当の価値は美しさだけではないということ。
毎日を支えてくれる信頼性、**メンテナンスの容易さ**、
そして何より愛着を持って付き合える関係性の大切さ。
一方で、**BSA441への憧れ**は、
バイクが持つ美しさや歴史の重みを教えてくれる。
機械としての完成度だけでなく、
心を動かす何かが確実に存在することを。
**シングルエンジンへの愛**は、
きっとこれからも続いていく。
次はどんな出会いが待っているのだろうか。
楽しみは尽きない。
今手元に2台目のBSA441がある。
早く復活させたい気持ちでいっぱいです。


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