
エアコンプレッサーが突然停止!
サーマルスイッチ作動時の
正しい対処法と再発防止策
ガソリンスタンドで使用している
3.7kw三相200Vの
エアコンプレッサーが
突然動かなくなった経験は
ありませんか?
多くの場合、これは
サーマルスイッチ(過負荷保護装置)が
作動したことが原因です。
本記事では、サーマルスイッチの
役割から再起動の方法、
そして再発防止策まで
詳しく解説します。

サーマルスイッチとは何か
サーマルスイッチは、
コンプレッサーのモーターを
過熱や過負荷から守るための
安全装置です。
モーターに流れる電流が
規定値を超えたり、
モーターの温度が異常に上昇したりすると、
自動的に電源を遮断して
モーターの焼損を防ぎます。
いわば「モーターの命を守る番人」と
考えてください。
サーマルスイッチの種類
一般的に使用されている
サーマルスイッチには
以下の種類があります。
- バイメタル式:温度変化でバイメタルが湾曲し、接点を開く方式。最も一般的なタイプです。
- 電流検知式:モーターに流れる電流を検知し、過電流時に作動します。
- 複合式:温度と電流の両方を監視し、いずれかが異常値になると作動する高性能タイプです。
サーマルスイッチが作動する
主な原因
1. 連続運転による過熱
休憩なしで長時間使い続けると、
モーターが過熱して
サーマルが作動します。
特に夏場の高温時は注意が必要です。
多くの機種はデューティサイクル70%
(10分運転、3分休止)を
想定して設計されています。
2. 電圧降下
他の大型機器との同時使用や、
電源コードが細すぎる・長すぎる場合、
モーターに十分な電圧が
供給されず過電流が流れます。
三相200Vの場合、
電圧降下が10%を超えると
モーターに深刻な影響を与えます。
3. タンク内圧力の異常
アンローダーバルブの故障などで、
始動時に高圧がかかったままだと
モーターに過大な負荷がかかります。
通常、始動時はタンク内圧力が
0.2MPa以下である必要があります。
また、圧力弁の劣化によっても
サーマルスイッチが作動することがあります。
圧力スイッチやリリーフバルブが正常に機能しなくなると、
設定圧力を超えてもモーターが停止せず、過負荷状態が続いて
過熱の原因となります。
4. 機械的トラブル
ベアリングの摩耗、
ベルトの張りすぎ、
圧縮部の固着などがあると、
モーターに過負荷がかかります。
これらは徐々に進行するため、
定期点検で早期発見が重要です。
5. ホコリや油汚れ
冷却ファンや放熱フィンに
ホコリが詰まると、
冷却効率が低下して
過熱の原因になります。
特にガソリンスタンドでは
路面からの粉塵が多いため、
清掃頻度を上げる必要があります。
サーマルスイッチの
リセット手順
停止したコンプレッサーを
再起動する前に、
必ず以下の手順を守ってください。
ステップ1:電源を切る
まずメインスイッチをOFFにし、
ブレーカーも落とします。
安全第一です。
ステップ2:冷却時間を確保
最低30分、できれば1時間程度
モーターを冷まします。
急いでリセットしても、
モーターが熱いままでは
すぐに再作動します。
夏場は冷却時間を長めに
取ることをお勧めします。
ステップ3:原因の確認
冷却中に、なぜサーマルが
作動したのか原因を探ります。
タンクの圧力計を確認し、
異常な高圧がかかっていないか
チェックします。
ステップ4:リセットボタンの
位置確認
サーマルリレーは通常、
制御盤(マグネットスイッチ)の
内部にあります。
赤や青の小さなボタンが
付いています。
機種によって位置が異なるので、
取扱説明書で確認してください。

ステップ5:リセット操作

ボタンを「カチッ」と音がするまで
しっかり押し込みます。
手応えがあるはずです。
中途半端な押し方では
リセットされません。
注意:他の箇所を不用意に触らないようにして下さい。
感電します。

ステップ6:タンクのエア抜き
始動負荷を減らすため、
ドレンコックを開けて
タンク内の圧縮空気を抜きます。
これにより始動時の負荷が
大幅に軽減されます。
ステップ7:再起動
ブレーカーを入れ、
メインスイッチをONにします。
正常に起動するか確認します。
起動後、異音や振動が
ないかも確認してください。
再発防止のための日常管理
サーマルスイッチの頻繁な作動は、
機器の寿命を縮めるサインです。
以下のポイントで管理してください。
運転管理
連続運転は避け、
1時間運転したら15分程度の
休憩時間を設けましょう。
デューティサイクル(運転率)は
機種の仕様を確認してください。
環境整備
コンプレッサーの周囲は
風通しを良くし、
直射日光を避けます。
放熱スペースとして
周囲30cm以上は確保してください。
特に夏場は室温管理も重要です。
清掃メンテナンス
月に1回は冷却ファンや
放熱フィンのホコリを除去します。
圧縮空気やブラシで清掃してください。
ガソリンスタンドの環境では、
2週間に1回の清掃が
理想的です。
電源の確認
電源コードの太さは規定通りか、
延長コードを使っている場合は
適切な太さか確認します。
他の大型機器との同時使用は
避けましょう。
定期点検項目
| 点検項目 | 頻度 | 確認内容 |
|---|---|---|
| ベルトの張り | 月1回 | 1cm程度たわむのが適正 |
| オイル量 | 週1回 | 規定レベルの維持 |
| ドレン排出 | 毎日 | 作業終了時に必ず実施 |
| 異音・振動 | 毎日 | 起動時と運転中に確認 |
| 圧力計 | 週1回 | 正常な作動範囲か確認 |
中古機や過去に酷使された
機器の注意点
中古のコンプレッサーを
導入した場合や、
以前の使用環境が劣悪だった
機器には特に注意が必要です。
過去に酷使されたコンプレッサーは圧縮機の圧力弁の硬化により、
モーターが起動が困難になるとサーマルスイッチが飛ぶ事があります。
モーター内部の劣化
過去に連続運転を繰り返していた
形跡のあるコンプレッサーは、
モーター内部の巻線が過熱によって劣化し、
抵抗値が異常をきたしている可能性があります。
モーター巻線の絶縁被膜は
過熱を繰り返すことで劣化し、
層間短絡や抵抗値の変化が起こります。
一度この状態になると、
正常な電流値でも
モーターが発熱しやすくなり、
サーマルスイッチが作動しやすくなります。
修理しても改善しない理由
重要なのは、この場合、
ベアリング交換やベルト交換、
圧縮部のオーバーホールなど
機械的な修理を行っても、
モーター内部の抵抗値異常は
改善されないという点です。
そのため修理後も
サーマルスイッチが頻繁に
作動し続けることがあります。
対処方法
このような症状が見られる場合は、
モーター自体の交換または
コンプレッサー本体の更新を
検討する必要があります。
抵抗値の測定には
専用のテスターが必要ですので、
専門業者による診断を
お勧めします。
中古機購入時のチェックポイント
- 運転時間の確認:アワーメーターがある場合は、総運転時間を確認します。5000時間を超えている場合は要注意です。
- 外観の汚れ具合:清掃が行き届いていない機器は、内部メンテナンスも不十分な可能性が高いです。
- 試運転の実施:購入前に必ず30分以上の試運転を行い、サーマル作動がないか確認します。
- 前オーナーの使用状況:可能であれば使用環境や運転パターンを聞き出します。
季節ごとの注意点
夏季(6月〜9月)
高温多湿の環境では
モーターの冷却効率が低下します。
運転時間を通常の80%程度に抑え、
休止時間を長めに取ってください。
室温が35度を超える場合は、
換気扇やスポットクーラーの
設置を検討しましょう。
冬季(12月〜2月)
寒冷地では始動時の負荷が
増大します。
オイルが固くなるため、
始動前に5分程度の暖機運転を
行うことをお勧めします。
また、結露によるドレンが
凍結しないよう注意が必要です。
専門業者への相談が
必要なケース
以下の症状がある場合は、
自己判断せず専門業者に
相談してください。
- リセット後もすぐにサーマルが作動する
- モーターから焦げ臭いにおいがする
- 異常な振動や異音がある
- 起動時に「ガクン」という大きな音がする
- 圧力が正常に上がらない
- 機械的な修理を行ってもサーマル作動が改善しない
これらは内部の故障を示唆しており、
無理に使用を続けると
モーター焼損など
重大な故障につながります。
修理と買い替えの判断基準
| 状況 | 判断 |
|---|---|
| 使用年数5年未満 | 修理を優先 |
| 使用年数5〜10年 | 修理費用と新品価格を比較 |
| 使用年数10年以上 | 買い替えを検討 |
| モーター巻線異常 | 買い替えを推奨 |
まとめ
サーマルスイッチの作動は
故障ではなく、
正常な保護機能の働きです。
しかし、頻繁に作動する場合は
何らかの問題があるサインです。
適切な冷却時間を取ってから
リセットし、原因を特定して対策することで、
コンプレッサーを長く安全に
使用できます。
特に中古機や使用歴が不明な機器を導入する際は、
過去の使用環境によってモーター内部に蓄積された
ダメージが残っている可能性を考慮してください。
圧力弁(バルブ)の劣化
また過去に酷使された状況がある場合は
圧力弁(バルブ)が劣化し
モーターの力でバルブが開かない
ケースがあります。
圧力弁の劣化でサーマルリレーが飛ぶケースもあります。
※モーターの焼損を保護するために
サーマルリレーが飛びます。
日々のメンテナンスを習慣化し、
異常を早期に発見することが、
突然の作業中断を防ぐ
最善の方法です。
ガソリンスタンドの運営において、
エアコンプレッサーは
欠かせない設備です。
この記事を参考に、
適切な管理と対処を
心がけてください。
不明な点や不安なことがあれば、
遠慮なく専門業者に
相談することをお勧めします。

