コンプレッサーのネジ配管で悩んでいる人へ
「新しい継手を買ってきたのにネジが合わない…」
「カプラーを交換しようとしたら、サイズが微妙に違う…」
コンプレッサーのエア配管はインチです。
ミリだと思ってネジを回すと必ずネジ山を壊すことになります。
東京都江戸川区で80年にわたり圧縮機とガス切断機器の修理を専門としてきた藤井商店では、
このような相談を数多く受けてきました。
この記事では、エアー機器のネジ規格について、
修理現場で培った知識と経験をもとに詳しく解説します。
エアー機器の継手に使われるインチネジとは
インチネジの基礎知識
エアー機器の継手には、主にPTネジ(管用テーパネジ)が使用されています。
PTはPipe Thread(パイプスレッド)の略で、配管用のネジ規格です。
インチネジの特徴
- サイズ表記が分数(1/8、1/4、3/8、1/2など)
- テーパー(先細り)形状で気密性が高い
- 欧米の工業規格に準拠
一般的なエアー継手のサイズ
- 1/8インチ(約3.2mm)
- 1/4インチ(約6.4mm)- 最も一般的
- 3/8インチ(約9.5mm)
- 1/2インチ(約12.7mm)
一般的なお店では販売していません。
メートルネジとの決定的な違い
日本の一般的な機械部品に使われるメートルネジ(M6、M8、M10など)とは、
まったく別の規格です。
1. ピッチ(ネジ山の間隔)が異なる
- インチネジ:インチあたりのネジ山数で表示(例:11山/インチ)
- メートルネジ:ミリメートル単位で表示(例:1.25mm)
2. ネジ山の角度が異なる
- PTネジ:55度
- メートルネジ:60度
3. 形状の違い
- PTネジ:テーパー形状で締め込むほど密着
- メートルネジ:平行ネジが基本
見た目が似ていても互換性は全くありません。
無理に組み合わせるとネジ山が破損し、エア漏れの原因となります。
組み付けるとき、必ずシールテープを使いましょう。
ねじ込む方向に対して反時計回りが基本です。
なぜエアー機器はインチネジなのか
歴史的背景
空気圧縮機や空気圧工具は、19世紀末から20世紀初頭にかけて欧米で実用化されました。
当時の工業規格はインチ系が主流で、その名残が現代まで続いています。
日本でも戦後、欧米からエアー機器の技術が導入された際に、
インチネジ規格がそのまま採用されました。
工業製品の互換性を保つため、現在でもエアー業界ではインチネジが標準となっています。
気密性と安全性の観点
PTネジ(管用テーパネジ)がエアー機器に適している理由:
テーパー構造による高い気密性
先細りの形状により、締め込むほど密着度が上がり、
エア漏れを防ぎます。
振動に強い
エアー工具は使用中に振動が発生しますが、
テーパーネジは緩みにくい特性があります。
シール材との相性が良い
PTネジは液状ガスケットやシールテープとの組み合わせで、
確実なシールが可能です。
現場でのトラブル事例と対処法
ケース1:ホームセンターで買った継手が合わない
最も多いトラブルです。
ホームセンターの水道用継手コーナーには、
メートルネジとインチネジが混在しています。
※良く間違えるので素人は触らないように!
対処法
- 購入前に必ず規格を確認する
- 「PT1/4」などの表記を探す
- 不明な場合は実物を持参して確認
- 店員さんに「エアー用」と明確に伝える
ケース2:中国製の安価な部品を使ったら精度が悪い
近年、安価な海外製品が増えていますが、
ネジ精度が低い製品も存在します。
※精度が悪いネジはコンプレッサーに合いません。
また経年劣化の激しいコンプレッサーは
ネジ山がいたんでいるので合わないことも
良く有るのです。
対処法
- 信頼できるメーカーの製品を選ぶ
- 重要な箇所には日本製や欧米製を使用
- 初期投資を惜しまない(後の修理費用の方が高くつく)
ケース3:古い機械の部品が見つからない
30年以上前の機器では、
現行品と互換性がない場合があります。
対処法
- 専門の修理業者に相談
- 変換継手を使用
- 場合によってはオーダーメイド加工
藤井商店では、このような特殊なケースにも対応してきた実績があります。
正しい部品選びのポイント
サイズの確認方法
1. 既存の部品を確認
- 継手に刻印されたサイズ表記を読む
- 「PT1/4」「R1/8」などの表記を探す
- 何も書いていない場合は専門店で確認
2. ネジゲージで測定
- 専門店ではネジゲージで正確に測定可能
- 目視だけでは判断困難
- 無料で測定してくれる店舗もあります
3. カタログで照合
- メーカーの技術資料を参照
- 機器の型番から適合部品を調べる
- 不明な場合はメーカーに問い合わせ
購入時の注意点
信頼できる購入先
- 工具専門店
- 空圧機器専門商社
- メーカー直販
- 実績ある修理業者
※わからないのでしたら最初から触らないで下さい。
避けるべき購入先
- 規格表記が不明確な通販サイト
- 「汎用品」と称する出所不明な製品
- 極端に安価な海外製品(品質確認が必要)
シール材の選択
PTネジを正しく使用するには、適切なシール材が必要です:
1. 液状ガスケット
- 高圧・高温に対応
- 確実なシール性
- 専門業者推奨
2. シールテープ(テフロンテープ)
- 低圧配管に適する
- 巻き方にコツが必要
- 巻きすぎ・巻き不足に注意
3. Oリング併用タイプ
- 着脱頻度が高い箇所
- カプラーなどに使用
- 定期的な交換が必要
エアー機器メンテナンスの基本
定期点検のポイント
継手部分は定期的な点検が重要です:
- エア漏れチェック(石鹸水で確認)
- ネジの緩み確認(定期的な増し締め)
- 継手の摩耗チェック(交換時期の判断)
- 異音の確認(シューという音はエア漏れのサイン)
長持ちさせるコツ
適切なトルクで締める
締めすぎはネジ山を傷めます。
緩すぎはエア漏れの原因になります。
※この辺はプロじゃないと加減がわかりません。
清掃を怠らない
ゴミや油汚れを除去することで、
ネジ山の損傷を防ぎます。
使用環境に応じた部品選択
- 屋外使用は耐候性のある材質
- 化学薬品環境は耐食性を考慮
- 高温環境は耐熱性を確認
専門業者に依頼すべきケース
DIYでの対応が難しい場合:
- 高圧システム(安全性が最優先)
- 特殊な継手規格(専門知識が必要)
- 古い機器(部品調達が困難)
- エア漏れが止まらない(原因特定が必要)
- 何度も同じ箇所が壊れる(根本原因の解決が必要)
80年の歴史を持つ藤井商店では、
あらゆるケースに対応してきた経験があります。
「ネジが合わない」という些細な相談から、
古い機器の完全オーバーホールまで、お気軽にご相談ください。
まとめ:エアー機器はインチネジが基本
エアー機器の継手がインチネジ規格である理由と、
正しい知識をご紹介しました。
重要ポイント
- エアー継手はPTネジ(インチ規格)が標準
- メートルネジとは互換性がない
- サイズは分数表記(1/8、1/4、3/8、1/2など)
- テーパー形状で気密性を確保
- 購入時は必ず規格を確認
「たかがネジ」と思われるかもしれませんが、
エア漏れは圧縮機の効率低下、電気代の無駄、
工具の性能低下につながります。
正しい知識で適切な部品を選び、
安全で効率的なエアーシステムを維持しましょう。
ネジ規格でお困りの際は、経験豊富な専門業者にご相談されることをお勧めします。
藤井商店では、江戸川区を中心に80年間培ってきた技術と知識で、
皆様のエアー機器のトラブルを解決いたします。



